余白⑦|一日が長い日と、短い日

余白⑦|一日が長い日と、短い日

介護が始まってから、
時間の感じ方が、少しおかしくなりました。

同じ一日なのに、
やけに長く感じる日と、
気づいたら終わっている日がある。

何をしたわけでもないのに、
どっと疲れている日もあれば、
あれ、今日はもう夜?と思う日もありました。

特別な予定があるわけではありません。
時計を見て、
次に何をするかを考えて、
それを終えたら、
また時計を見る。

ただそれだけなのに、
時間が、妙に重たい。

昼間は、
やることがいくつも頭に浮かんで、
どれから手をつければいいのか分からなくなる。

夜になると、
一日が無事に終わったような、
終わっていないような、
不思議な感覚。

早く過ぎてほしいのに、
過ぎてしまうのが怖い。
そんな気持ちが、
同時にありました。

たぶん、
時間そのものが変わったというより、
「待つ時間」が増えたのだと思います。

次の薬まで。
次の様子を見るまで。
次の判断をするまで。

何かが起きるわけでもなく、
何も起きないことを、
確認し続ける時間。

その時間は、
驚くほど長い。

一方で、
自分の家に戻った日は、
時間が一気に縮みます。

仕事を始めると、
途端に、
水を得た魚のような感覚になる。

考えて、
判断して、
言葉を選って、
頭も心もフル回転。

介護の時間が、
どちらかといえば「頭をオフ」に近いとすれば、
家に戻って仕事をする時間は、
完全に「オン」。

そのギャップが、
最初は戸惑いだったのに、
次第に、
この生活を楽しむコツのようなものになっていきました。

介護の時間は、
気を張りすぎないように過ごす。
家に戻ったら、
思いきり動かす。

今思えば、
介護の時間が、
逆に、
心と頭を休ませる
充電時間になっていたとも言えます。

そんな切り替え方を、
時間をかけて、
少しずつ掴んでいった感じです。

そのおかげか、
自分でも思っていた以上に、
少し強くなったような、
少し図太くなったような。

一日が長い日と、
短い日。

その行き来を繰り返しながら、
自分なりのリズムが、
ようやくできてきた頃でした。