余白④|私の家では、いつも通りの一日で

余白④|私の家では、いつも通りの一日で

自分の家に戻ると、
そこでは、いつも通りの一日が続いていました。

玄関に入った瞬間から、
介護の緊張感とは、
まったく別の空気。

「明日、体操服いるから」
と、夜になってから洗濯物を出す息子。

「今?」と思いながらも、
何も言わずに洗濯機を回す。

その横で、
「このカラコンと、こっち、どっちがいいと思う?」
と、真剣な顔で聞いてくる娘。

どっちでもいいと言えば怒られるし、
適当に答えると、
「ちゃんと見て」と言われる。

そんなやり取りをしながら、
ごはんを作って、
洗濯物を干して、
一日が終わっていく。

自分の家に戻っても、
束の間の安堵感はあっても、
気持ちがきれいに切り替わるわけではありませんでした。

頭の片隅には、
母のことがあって、
今日の様子はどうだっただろう、と
ふと思い出す。

それでも、
この家では、
生活が止まりません。

介護をしている時間だけが、
介護なのではなくて、
こうして、
別の場所で過ごしている時間にも、
その気配は、
ずっとついて回っていました。

でも、
息子の体操服を干しながら、
娘のカラコンの色を一緒に悩みながら、
「こういう何でもない時間って、
実は、かなり幸せなのかもしれないな」
と、ふと思う瞬間がありました。

大きな感謝とか、
特別な気づきではありません。
ただ、
笑って、
少し面倒で、
明日もたぶん同じことをする。

そんな日常を、
介護が始まったからといって、
すぐに手放せるものでもなくて。

この頃から、
そんなふうに感じ始めていたのかもしれません。

私の家では、
今日も、
いつも通りの一日が続いていました。

その「いつも通り」が、
前より少しだけ、
愛おしく感じられるようになりながら。