余白②|みーちゃんと、増えていった猫たち

余白②|みーちゃんと、増えていった猫たち

母の家のまわりには、
いわゆる地域猫がいました。

最初にいたのは、
一匹だけのオス猫。
いつの間にか、
その猫は母の中で
「みーちゃん」と呼ばれる存在になっていました。

正式に飼っているわけではありません。
外にいる猫で、
人にもそう簡単には慣れないはずの存在。
それなのに、
母はなぜか、
そのオス猫だけをやけに可愛がっていました。

私から見ると、
正直、絵に描いたようなブサカワ猫です。
顔のバランスも、
体のフォルムも、
どこかちぐはぐ。
でも、その何とも言えない姿が、
不思議と残る。

しかも、
みーちゃんは距離が近い。
体をすりっと擦りつけてくる。
さわれる。
普通に。

地域猫なのに、
なぜか、そこだけ家族枠。

そんなみーちゃんを中心に、
いつの間にか、
猫は増えていました。

元からいたみーちゃんに、
母猫が一匹。
さらに、
その子どもが三匹。

あとから数えると、
なかなかの増え方です。
でも、そのときは、
増えた、というより、
「いつの間にかいた」
という感覚のほうが近かった気がします。

母は、
体を起こすのも大変になってからも、
猫たちのことは、
ずっと気にしていました。

「ちゃんと来てる?」
「今日は何匹いた?」

自分の体調より先に、
そんなことを聞いてくる。

最後のほうには、
「この子たちを、最後まで面倒見られなくて申し訳ない」
そんな言葉も、
ぽつりとこぼしていました。

地域猫だから、
誰かの飼い猫というわけではありません。
それでも、
母にとっては、
確かに“ここにいる命”だったのだと思います。

元気だったら、
きっと、
この猫たちを飼いたかったのだろうな、
と思ったことがあります。

でも、
現実はそう簡単ではなくて、
猫たちは今日も、
外で、
それぞれ勝手に過ごしている。

みーちゃんは相変わらず、
すりっと近づいてきて、
何事もなかった顔をしている。

母がどんな気持ちで
この猫たちを見ていたのか、
全部は分かりません。

ただ、
母の視線の先には、
いつも猫たちがいて、
その光景が、
この介護の時間の中で、
少しだけ肩の力を抜かせてくれたのも、
たしかでした。