第42話|夜の静けさ——不安ではなく、必要な見守りへ

第42話|夜の静けさ——不安ではなく、必要な見守りへ

第42話|夜の静けさ——不安ではなく、必要な見守りへ

夜の過ごし方が変わった

日中の様子が変わってから、
夜の過ごし方も、自然と変わっていきました。

以前は、
「何かあったら呼んでね」と声をかけて、
それぞれが休む時間を取っていました。

この頃からは、
その「呼んでね」が、
ただの声かけでは済まなくなっていきました。

福祉用具からセンサーマットを借り、
ポータブルトイレを準備する。
呼ばれたら、
トイレの介助と水分補給。

夜のあいだ、
誰かがずっとそばにいるわけではありません。
けれど、
呼ばれたときに、必ず反応できる状態でいることが
前提になっていきました。

それまで一人でできていたことが、
夜の中でも、
少しずつ誰かの手を介するようになっていった——
そんな変化でした。


音の少ない時間

夜になると、
家の中はとても静かになります。

時計の音。
遠くを走る車の音。
母の寝息。

そのどれもが、
昼間よりはっきりと聞こえてきました。

物音がしないからといって、
不安になることはありませんでした。

ただ、
様子を確かめるために、
静かに気を配っている——
そんな時間でした。


見守るということ

夜中に、
何度も起きるわけではありませんでした。

常に何かをする必要が
あるわけでもありません。

それでも、
呼ばれたら動ける人がいる
その距離に、
人の気配がある。

それだけで、
夜は少し違っていました。

不安から目を離せない、
というよりも、
必要なときに応じられるようにしておく。

付き添うでもなく、
放っておくでもない。

そのあいだにある状態を、
この頃は
「見守り」と呼んでいたのだと思います。


静けさの中にある確かさ

夜の静けさは、
張りつめたものではありませんでした。

むしろ、
日中の慌ただしさが落ち着き、
一日の終わりを受け止めるような
穏やかさがありました。

誰かが起きている。
誰かが気にかけている。

その事実が、
夜を特別なものにせず、
ただの生活の一部にしていきました。


見守りが日常になる

この頃には、
夜の見守りは
特別な役割ではなくなっていました。

無理をしない。
緊張しすぎない。

静かな夜を、
静かなまま過ごす。

それが、
今の母にとっても、
私たちにとっても、
一番自然な形だったのだと思います。

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