第47話|眠っている時間が増える——起きている瞬間の輪郭

第47話|眠っている時間が増える——起きている瞬間の輪郭

第47話|眠っている時間が増える——起きている瞬間の輪郭

目を閉じている時間が長くなる

この頃から、
母が目を閉じている時間は
はっきりと長くなっていきました。

朝、目を覚ましても、
しばらくそのまま。
声をかければ、
うっすらと反応はあるけれど、
また静かに眠りに戻っていく。

一日の中で、
起きている時間のほうが
短く感じられる日が
増えていきました。


眠りは、休息のようでもあり

眠っている姿を見ると、
休めているのだと
思えることもありました。

呼吸は落ち着いていて、
表情も穏やか。

無理に起こす必要はなく、
そのままにしておくことが
自然だと感じられました。

眠りは、
弱っている証のようでもあり、
同時に、
体を守るための時間のようにも
見えていました。


起きている瞬間が、はっきりする

眠っている時間が増えるほど、
起きている瞬間は
輪郭を持って感じられるようになりました。

目を開けて、
こちらを見る。
小さくうなずく。
短い言葉を返す。

その一つひとつが、
以前よりも
はっきりと胸に残ります。

長い会話はなくても、
確かに、
そこに母がいる。

そのことを、
起きている時間が
教えてくれていました。


無理に起こさないという判断

眠っているときに、
声をかけるかどうか。

起こして何かをするか、
そのままにしておくか。

迷うことはありましたが、
この頃は、
無理に起こさない選択を
取ることが多くなっていました。

起きている時間を
大切にするために、
眠りの時間を
尊重する。

そんなふうに、
判断の軸が
少しずつ定まっていきました。


静かな一日の中で

一日の大半を
眠って過ごす日もありました。

それでも、
起きているわずかな時間に、
目を合わせる。
声を聞く。

その瞬間があれば、
その日は
十分だったのだと思えました。

眠りが増えても、
関係が薄れていくわけではない。

起きている時間の中に、
確かなつながりが
残っていました。

第46話|話す言葉が減っていく——沈黙が増えた日
第48話|手を握る時間——言葉の代わりに残るもの