第43話|薬の管理と飲めない日——“無理をしない”という選択

第43話|薬の管理と飲めない日——“無理をしない”という選択

第43話|薬の管理と飲めない日——“無理をしない”という選択

薬が「決まった時間」でなくなる

この頃から、
薬の管理のしかたも、少しずつ変わっていきました。

以前は、
時間を決めて、
決められた量を飲む。

それが当たり前でした。

けれど、
飲み込むこと自体がつらそうな日が増え、
「今日は難しそうだね」と
声をかけ合う場面が増えていきました。


飲み方を変えるという工夫

この頃から、
薬はゼリー状のものに包んだり、
介護食のゼリー混ぜたりして、服用するようになりました。

もともと、
母は薬の服用をあまり好んでいませんでした。

けれど、
日に日に薬の種類が増え、
抗うような様子も
少しずつ見られなくなっていきました。

嫌がる、というよりも、
向き合う力を使わなくなっていった
そんな印象でした。


薬の時間が、別の意味を持つ

食事量が十分に取れない母にとって、
介護用の高カロリーゼリーを摂れる時間は、
とても貴重なものでした。

それが薬の服用と重なることで、
「飲める」「口にできる」機会として
受け止められるようになっていきました。

薬を飲むための工夫が、
結果として
体に入るものを確保する時間にも
なっていったのです。


管理することより、大切なこと

飲めたかどうか。
何時に飲んだか。
量は足りているか。

そうした確認よりも、
母の表情や呼吸のほうが、
大事に感じられるようになっていました。

薬を“きちんと管理する”ことより、
その日の母に無理をさせないこと。

判断の軸が、
少しずつそちらへ移っていきました。


医師や薬剤師と共有する

飲めなかった日があったことや、
飲み方を変えていることは、
そのまま医師や薬剤師に伝えました。

責められることも、
咎められることもありません。

「それでいいと思います」
「無理しないでいきましょう」

その言葉に、
私たちの選択が
間違っていなかったのだと
静かに確かめることができました。


“無理をしない”を選ぶ

薬の管理は、
正解を積み重ねる作業では
なくなっていました。

その日、その時の状態に合わせて、
できることを選ぶ。

できないことは、
無理に続けない。

それが、
この頃の生活に合った
“無理をしない”という選択でした。

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