第23話|支えてくれる人たち——チームの存在が落とした静かな安心

第23話|支えてくれる人たち——チームの存在が落とした静かな安心

第23話|支えてくれる人たち——チームの存在が落とした静かな安心

在宅での生活が続く中で、
母の暮らしを静かに支えてくれる人たちの存在が
少しずつ私たちの中で
大きな意味を持ち始めていました。

家族だけでは見落としてしまう視点、
気持ちの寄り添い方、
生活全体を見てくれる目。

それらが重なって、
ひとつの“チーム”ができていきました。


ケアマネジャー——母がいちばん心を開いていた人

月に1度のケアマネジャーの訪問は、
母にとって特別な日でした。

体調の話だけでなく、
家の中のこと、庭の草の伸び具合、
昨日のテレビ番組の話まで、
母はよく語りました。

ケアマネジャーもそれを急かすことなく、
「うん、そうなんですね」
「無理のない形で続けましょうね」
と、丁寧に受け止めてくれました。

母の表情には、
この人には“素の自分”を見せられるという
深い安心がありました。


訪問看護師——生活の小さな変化に気づく人

週に1度の訪問看護では、
看護師さんが家に入ってくるだけで
空気がふわりと明るくなるようでした。

体温、血圧、顔色、
話し方、動き方。

病状だけでなく、
生活そのものの変化を
やさしい眼差しで見てくれます。

「今日は少し疲れ気味かもしれませんね」
「無理せず、こんな感じで様子を見ましょう」

その言葉が落ちるたび、
私たちは
“今日の位置”をそっと教えてもらったような
安心感を覚えました。


訪問診療の先生——治療と気持ちを支える存在

2週に1度の診療の日、
母はいつも準備を整え、
少し早めの時間から先生を待ちました。

先生は必要な診察をしながら、
母が話したいことを
ゆっくりと聞く時間を作ってくれます。

猫の話、庭の話、
今日の体調や、明日の予定。

そして最後に母はいつも言いました。

「治療を続けたいんです。元気になりたいので」

その言葉を受けた先生が
静かに頷き、
「はい、一緒に続けていきましょう」
と言ってくれる瞬間。

その瞬間の母の表情は、
どこか晴れやかで、
胸の奥がすっと軽くなるようでした。


薬剤師さん——薬と一緒に安心を届けてくれる人

薬剤師さんが薬を届けてくれる日は、
玄関のチャイムがやわらかく響きました。

「調子はいかがですか?」
と声をかけながら、
薬の飲み方や注意点を丁寧に説明してくれる。

母は薬剤師さんの訪問に合わせて
小さな手帳を用意し、
気になることを書き留めていました。

薬が届くというより、
“小さな安心が届く”
そんな時間でした。


誰もが違う立場で、同じ方向を向いていた

ケアマネジャーは生活全体を、
看護師は日々の変化を、
先生は治療方針と気持ちを、
薬剤師は薬と安心を。

それぞれが別の役割なのに、
母を見つめる視線は
同じ方向を向いているようでした。

そしてその関わりは、
家族だけでは作れない
“安心できる暮らしの土台”を
静かに支えてくれていました。


ひとりじゃないと知った日の記録

玄関の扉が閉まり、
家の中に静けさが戻るとき、
どこかで
“ひとりじゃない”と感じられる。

その感覚が、
私たち家族にとって
どれほど大きな支えだったか。

母を守る“チームの気配”は、
言葉にしなくても
家の中にそっと残り続けていました。

第22話|昼間のひとり時間——穏やかな時間の中にある小さな気配
第24話|午前中の静けさ——家で過ごす“ふだんの母”に触れる時間