第20話|私自身の生活の変化——静かに形を戻していく日々

第20話|私自身の生活の変化——静かに形を戻していく日々

第20話|私自身の生活の変化——静かに形を戻していく日々

在宅生活が本格的に始まってからは、
まず姉妹で組んだシフト表に目を通すことが
一日の最初の確認になりました。

自分が行く日、行かない日。
その予定に合わせて
仕事の段取りや家のことを整えていく。

そんな習慣が、
気づけば日々の中に穏やかに溶け込んでいました。


生活の中心が、そっと移っていく感覚

以前は、
「今日の仕事はどう動くか」
「子どもたちの予定は」
と自分の時間を軸に
一日を組み立てていたはずなのに、

いつからか
「今日は母の体調はどうだろう」
「何時頃までならいられるかな」
と考えることが
自然な一日の始まりになっていました。

無理をしている感覚はなく、
ただ流れに合わせているうちに、
自分の生活が静かに
母の時間と重なっていったのだと思います。


薄くなっていった“自分の時間”

読みかけの本は
同じページを何度もめくるばかりで、
お気に入りの音楽も
しばらく再生されることはありませんでした。

友人との予定も
「また今度…」を重ね、
自分のための時間は
気づかないうちに薄くなっていました。

あの頃の私はただ、
“今はそういう時期”として
淡々と生活を回していたのだと思います。


少しずつ戻り始めた、自分のリズム

母の体調が安定してきたある時期から、
止まっていた自分の生活が
少しずつ、ゆっくりと戻ってきました。

書棚に長く置きっぱなしだった本を開いたり、
久しぶりに好きな音楽を流してみたり、
友人との約束を
以前と同じように予定したり。

これまでのように全てを戻すわけではなく、
戻せるところだけ、
静かに元の場所へ帰っていくような感覚でした。

仕事のペースも、
気づけば少しだけ穏やかなリズムを選ぶようになっていました。
忙しさに飲まれず、
ゆっくり呼吸を整えながら進むような働き方へ。

それは、
自分の生活をもう一度
“自分の手で調整し直している時間”でもありました。


日常を戻しながら、見えてきたもの

母と過ごす時間が増えるほど、
母の考えや歩んできた日々に
自然と心を寄せるようになりました。

編み物をする母の姿を目にしながら、
その背中を
これまで以上に静かに見つめる自分がいました。

その一方で、
これまで自分が選んできた人間関係や、
心地よさの基準にも
少しずつ変化が生まれていることに気づきました。

思うようにならない状況の中で、
何を受け止め、何を手放し、
どう整理していくのか。

母を支えながら過ごしたあの時間は、
自分自身の心の内側を
静かに照らし返してくれる時間でもありました。


この時間が与えてくれたもの

この在宅生活は、
削られていったものも確かにありました。
けれどその分、
これからどう生きたいのか、
何を大切にしていきたいのかを
ゆっくり考える時間が
自然と与えられていました。

母のそばで過ごす日々は、
母との関係を深める時間であると同時に、
私自身の生き方を見つめ直す
長く静かな余白でもあったのだと思います。

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